今までの自分にサヨナラを


本当によく似て優しい兄妹だ。


まだ“付き合う”という言葉は、ぴんとこなくて実感なんかまるでわかない。


今だって彼の優しさに甘えていいのか、迷っている。


彼のあんな顔を見てしまうと、わからなくなるんだ。


彼が壊れてしまいそうで……。


「ねえ、のんちゃん。……何で絵を描かなくなったのか知ってる?」


私は彼によく似た少し小さな温もりの中で呟いた。


彼のいないところで、彼の話そうとしなかったことを聞くのは、卑怯なことだ。


でも、それをわかっていても、知りたい。


彼に痛い笑顔は、似合わなすぎる。


偽りの笑顔は、後にも先にも私一人で十分だから。



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