泣き虫なお姫さま。

優しい声を持つ、彼女。





――― 放課後。


「頼むッ!」


「嫌だ」


「一生の頼みだ!」


「断る」


“今夜はまおん家かー”

なんて、悠長な事を考えていたら、血相を変えて陽太が近づいてきた。


「明日のバスケの助っ人、頼む」


顔の前で手を合わせる陽太には悪いが。


「明日なんて、無理。 今日、練習に出ないといけないだろ?」


「そこをなんとか!」


明日、陽太の所属するバスケ部は練習試合をする。

でも急に、選手だった1人が急用で出られなくなったらしい。


普段なら、陽太の頼みだし、バスケが好きだからOKの返事を出すが…… 今日は無理。

絶対に無理だ。


「この後は用事がある」


そう、まおん家に行かなくてはいけないんだ。


クラスが違う俺らは、朝の登校以外でまおと話す機会、見る機会が少ない。

だから、今日はさっさとまおん家に向かう予定。

いつもより、まおと長く過ごすことができる今日をバスケに使いたくはないのが――― 俺の本音だったりする。




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