泣き虫なお姫さま。




なんて考えていた、矢先に陽太の“バスケ”だ。


「絶対に嫌だ」


「なら……」


陽太が最終手段に踊り出る。


顔を寄せ、悪魔のような顔付きで声を潜めながら言う。


「まおちゃんに“樹が助けてくれない”って言うぞ」


「…… ッッ!」


それは、非常にまずい。

てか、それはダメだろ…… 普通に考えてさ。


「あーあ、樹がそんな態度をとるようならなー」


そう言いながら、陽太が意地悪く笑った。


「……」


まおは陽太に懐いている。

時々、愛川や俺と一緒に陽太の試合を見に行ったりもしているくらいだ。

陽太がどれだけバスケを頑張っているか知っているまおだからこそ。


「…… 卑怯者」


「悪いが…… 手段は選ばないよ、俺は」


まおなら絶対に言うよな。


“――― 陽太くんを助けてあげなよ”


あぁ、目の前にまおが居ないのに、まおの声がどこかから聞こえてくる。


ガタリ――― イスをずらし、立ち上がる。




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