オレ、トーフ。【短】
「大丈夫。大丈夫だよ」


トーヤはそう言いながら、オレごとユズハを抱き締めた。


「大丈夫だからな」


大きくて暖かい体は、まるで父親みたいだ。


オレは父親の顔も知らないのに、何だかそんな風に思った。


「二人なら大丈夫だから」


ユズハの背中をトントンと叩きながら、トーヤは呪文のように囁いた。


「それに……柚葉だって、恐いと思っただけじゃないだろ?」


「……っ、うん」


泣きながら頷いたユズハは、その後すごく小さな声でこう呟いたんだ。


「恐いけど、嬉しい……」


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