ヘタレ王子とヤンキー姫
教えてやるか。

こいつは樺音が選んだ奴だし。

「性同一性障害って知ってるだろ?」

「聞いたことはあるよ。」

「俺がそれ。物心ついた頃には、スカートが大嫌いだったし、男の遊びにしか興味なかった」

春樹は驚いて俺を見る。

「最初に気づいたのは両親だった。けど両親は、なんの抵抗もなく受け入れてくれた。」

そう、制服以外では、男物の服を着させてくれたし。

父さんはよく、キャッチボールをしてくれた。

「けど学校は違った。“俺”何て言ってる俺を、学校のやつらは排除したがった。」

春樹は黙って聞いている。

「そのイジメが原因で、俺は中学は県外を選んだ。その頃は、制服も男物で、名前は母さんが考えてくれた。
それで修学旅行で、樺音に再会したんだ。樺音は、俺がいじめられても、ずっと守ってくれた恩人なんだ。」

それから樺音とはまたつるむようになった。

「再会して、カミングアウトしたときあいつなんて言ったと思う?」

春樹は首をかしげる。

「何びびってんだよ!男ならやられたらやり返せよ!」

その時、こいつは俺を認めてくれる、唯一無二の友達なんだって思えた。

「それからは、あいつは俺の大事な親友だ。」

すべて話し終えた。

あとは、こいつがどうするかだな。
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