会いたい
「とおる――」
そう 確かに私は聞いた。
透の唇から洩れた、声のない言葉を。
いつもいつも、私が怒ったり哀しくなったりすると、透は慰めの言葉の代わりに、それを言うのだ。
透がいつも私にくれた言葉だったから、声が届かなくても私の記憶に、そして心に、届いた。
愛してるよ
とても鮮明に記憶は甦り、聞こえないはずの声さえ呼び戻した。
いつでも、透は私に一番大切なものをくれるのだ。
そして最後に、とびきりの贈り物を残していった。
これから先、たった一人でも生きていけるだけの、あざやかな想い出を。