会いたい
 あんなに揺らいだ心も、今は馬鹿らしく感じてしまう。
 所詮は他人なのだ。
 私が、私以外の何者にもなれないように、母が私を真に理解することはない。
 母は一人では生きられない人だもの。
 父親が死んで、一年たって、すぐに再婚した。
 義父のおかげで、母は安定した生活を取り戻し、私は大学までいけた。
 だから、そのことで母を責めたことはない。
 そういう人なのだ。
 それは哀しいことのようでいて、けれど、当たり前のことなのに――

「お母さんに、何がわかるって言うの――」

 嫌悪すら覚える。

「誰にもわからないわ、私の気持ちなんて! お母さんの思いやりは、私にはいつだって見当外れだもの! 一度だって、お母さんが本当に私のために何かしてくれたことがあるの!? お母さんが大事ににするのは、いつだって自分だけなのよ!!」

 私は叫ぶように言って、通話を切った。
 電源を落とし、バッグのポケットに押し込んだ。
 やりきれない思いに、たまらなくなる。
 私は深く呼吸を繰り返して、泣きたくなる感情を殺した。
 こんなことでなんか泣きたくない。
 母親の言葉に傷ついて泣くなんて。
 泣くんだったら、もっと価値のあることのために泣きたい。

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