会いたい
案の定、一週間後の週末の朝早く、また母から電話がかかってきた。
勿論、見合いを断った件でだ。
きんきんした声がありったけの語彙で私を責める。
私は黙っていた。言うだけ言わせて諦めさせようと思っていた。
『よく考えてみなさい。あんたはまだ若いんだから、これから先独りなんてとんでもないことなんだよ。いかず後家だって人様に言われて生きてくのかい』
宥めるような声。
私が言いつけに従わないような時、母はいつも私をこんな風にじわじわと心理的に懐柔しようとする。
『女が一人で生きていくなんて、簡単にできるわけないだろう? 年を取ってから、一人だったことを後悔するんだよ。そうなってからじゃ、遅いんだよ』
小さい頃は、そんな風に言われると本当に母の方が正しい気がして、結局言いつけに従ったものだった。
「――」
けれど、私はもう何も知らない、親だけが絶対で、正義で、真実だと信じていられるほどおめでたい子供ではなくなっていた。
偶像は当の昔に壊れ、私は親がただの、自分達と変わらない存在なのだということに気づいてしまっていた。