会いたい
想う

 困ったような、哀しい顔をして、幽霊は私の前に座り込んだ。
 そういえば体なんかないのに、どうして床をすりぬけていかないのだろうかと、私は全くこの状況に関係ないことを考えていた。

「――」

 そんな私の思いとは裏腹に、幽霊は心配そうに何かを言った。
 私は唇の動きを追う。
 ゆっくり、彼は繰り返す。

な か な い で

 何度も、彼は繰り返す。
 自分の方が泣きだしそうに哀しい顔をして。
 私の哀しみは彼の哀しみであり、彼の哀しみは私のものだった。

「――」

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