会いたい

 私はまた泣きたくなった。
 感じる前にもう涙は溢れて、私はただそれに、身を任せた。
 ずっとこんな風に泣いていなかった。
 ずっと、こんな風に自然に泣きたかった。
 この三年、私は透を想っていたが、泣きたくなったり、泣いてしまうと、いつも別のことを考えるようにしていた。
 泣いてしまえば止められなくなる。
 忘れるようにしていた哀しみまで思い出してしまう。
 だから、いつも楽しいことしか思い出さないようにしていたのだ。

 透と過ごした短い日々を、楽しかったあの日々だけを。

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