桜舞う中で


『すいません…』




そう言って先輩に近付く。


きっと携帯を出した時にでも落としたんだろう。




こんな大事なものを落としてしまった自分が恥ずかしかった。



手を伸ばし、受け取ろうとする私に



「宮本…

おう き‥ちゃん?」



生徒証を見つめながら尋ねてくる。



はぁ…


『はい

変な名前ですよねι』



今までに数え切れないほど名前のことで“変”とからかわれてきた私。


だから、きっと今回もそう思われてるんだろうと思った。



…のに



「何で?

かわいいじゃん


桜の姫ってことだよ」


先輩は予想もしなかった台詞を私に投げかけて



私の髪に触れると


「‥花びらついてた


まさに桜姫(サクラヒメ)だね」



桜の花弁を指で摘み、無邪気に笑った。



そんな先輩に


胸がトクンと

高鳴ったのを感じた…




< 4 / 22 >

この作品をシェア

pagetop