聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 しばらくして気がすんだのか、黒斗があたしから離れていった。

 体を起こす黒斗を見上げながら、あたしは息を整える。


 そのままの状態で少し沈黙があった後、黒斗が不意に話し出した。

「それにしても……。女だと思って好きになったやつが実は男だったなんてなぁ……。実は女でも、男だと思って好きになるのとどっちがマシだろ?」

 そう言って嘲(あざけ)り笑う黒斗に、あたしは信じられない気持ちでいた。


「何、笑ってんのよ……?」

 まだ僅かに切れる息を抑えて、あたしは起き上がる。

「二人とも真剣なんだよ? 真剣に悩んでるんだよ!? それを……友達である黒斗が笑うなんて!」

 あたしは非難の眼差しで黒斗に言い募った。

 なのに黒斗は動じることなく冷たい目で答える。


「俺にとって友達ってのは、一緒にバカやって楽しい奴。それだけだ。それ以上になる事なんか絶対にねぇよ」

 そう言った黒斗の目は、暗く、深い闇を宿していた。



 あたしはこのとき、黒斗の闇を垣間見たのかもしれない。


 あたしはその目に金縛りにあったかのように動けなくなる。

 そんなあたしを放って、黒斗は自分の部屋に帰っていった……。


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