聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 そしてあたし達は皆と連絡をとって、入り口付近で合流する。



「お前ら酷ぇよ。俺置いてくなんて」

 先に入り口付近で黒斗達と合流していた弘樹が、あたし達の姿を確認して言った。

 それに高志が答える。

「お前が勝手にはぐれたんじゃねぇか!」


 あたしはその二人をほっといて、黒斗達の方を見た。

 由理香ちゃんが袋いっぱいにぬいぐるみを持っている。


「うわ、凄いなこれ。全部黒斗が取ったのか?」

 素直な賞賛と共に聞いてみると、意外な言葉が由理香ちゃんの口から出た。


「これは全部あたしが取ったのよ。お兄ちゃんドヘタなんだもん」

 呆れ混じりに笑いながら言う由理香ちゃん。
 それとは対照的に黒斗は恥ずかしそうにムスッとしている。

「るせぇ……。アームが弱すぎるんだよ」


 その負け惜しみの台詞に、あたしと由理香ちゃんは一緒になって笑った。



 何だろう……由理香ちゃん相手だからかな?

 黒斗、いつもと違う。

 自然体な感じ。


 本来の黒斗は、こんな感じなのかもな……。



「それじゃあお兄ちゃん。そろそろあたし帰るね」

「ん、ああ」

「たまには家に帰ってきてよね。お母さんもお父さんも、あたしもいつでも待ってるんだから」

 そう笑顔で言った由理香ちゃんに、黒斗は頭を撫でて笑顔で「サンキュー」と言っていた。

 その笑顔は、初めて見るものだった。



 黒斗……そんな笑顔も出来るんだ。



 あたしや、弘樹や高志。
 仲のいいあたし達ですら見たことの無い笑顔。

 心の底から……本心からの笑顔。


 弘樹や高志に向ける仮面の笑顔でもなく。

 あたしにだけ見せる本性の笑顔でもない。


 それは多分、信頼している人にしか見せない笑顔なんだ……。


 あたしは何故か寂しい気持ちになって、少しうつむいた。


 でもそんな寂しい気持ちは、由理香ちゃんのとんでもない言葉で吹っ飛ぶ。
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