愛・地獄変 [父娘の哀情物語り]
 そんなある日洗面所で顔を洗っておりますと、娘が
「はい、タオル!」と、私に差し出してくれるのでございます。
そして、
「これからは私が、お母さんの代わりをやって上げる。」と、申すのでございます。
 突然のことに、私は何が起きたのか理解できずにおりました。
娘の差し出すタオルが私の手に乗せられるまで、茫然自失といった状態でございました。
昨日までの、冷たい視線が嘘のようでございます。
ひょっとして妻が本当のことを娘に話したのでは、と思ってしまいました。

「お父さんも、年とったわね。
ここに白髪があるわ。」と、後ろから娘の声が。
「抜いて上げる。」と、私の白髪を抜いてくれました。
あぁ、その時でございます、まさしくその時なのでございます。
腰をかがめていた私の背にのし掛かるようにしてのことでしたので、娘のやや固い乳房の感触が心地よく伝わってきたのでございます。
 
 まさにその時でございます。
・・・どうぞわたくしめを鬼畜と罵ってくださいな。
いくら血のつながらない親子とはいえ、十六年間娘として育ててきたのでございます。
その娘に対し、一瞬間とはいえ欲情を覚えたのでございます。
恥ずかしながら、私の逸物が反応していました。
恐ろしいことでございます。
畜生にも劣ります、はい。

しかし娘にしてみれば、何ということもなかったのでしょう。
機嫌良く、学校に出かけました。
♪ふんふん♪と鼻を鳴らし、
「行って来ま~す!」と、妻譲りの美しい声を残して行きます。
その日の私ときたら、まるでだめでございました。
どうにも落ち着きません。
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