死が二人を分かつまで
知子の思い
「津田さん、電話ですってよ」
自分のデスクにてスケジュール確認をしていた津田は、左斜め向かいに座っている同僚の女性から声をかけられた。
「ん?俺?」
電話機はすべてのデスクの上に設置してある訳ではない。
その同僚に電話台の向きを変えてもらい、自らも立ち上がり体を伸ばして、津田は受話器を受け取った。
「はい?」
『小谷さんという方から、1番にお電話入ってます』
相手は総務の女性だった。
電話はまず代表番号にかかって来て、そこからそれぞれの部署にまわされるのだ。
『小谷……』
津田は急いで1番のボタンを押した。
「お電話代わりました。私、津田ですが」
『あ…。お忙しい所申し訳ないです。私、先日お会いしました、小谷さとしの伯母でございます』
「ああ、どうも」
やはり相手は名前を聞いた瞬間に思い浮かべた人物だった。
この前挨拶に行った時、津田は自分の名刺を置いて来た。
そこには電話番号も印字されている。
会社から支給されている携帯番号も載っているのだが、まずは固定電話からかけてみたのだろう。