死が二人を分かつまで
『その節は大変失礼いたしました。せっかくお越しいただいたのに、追い返すようなことをしてしまって』

「いえいえ。こちらこそ突然お邪魔してしまって、ご迷惑おかけしました」

『あの、ほんの少しの時間で結構なんですが、今日お会いできないでしょうか?もちろんこちらからお伺いしますので』

「え?今日、これからですか?」


ずいぶん唐突だな、と心の中で呟く。


「いや…しかし、ご主人は大丈夫なんですか?」


『あの人は仕事で夕方まで帰りませんから』


「あ、そうですね。う~ん……」


津田は迷った。


スケジュールは厳しいが、しかし、せっかく面会の申し出があったというのに断るのも忍びない。


この機会を逃したら、今度いつその気になってもらえるか分からないのだ。


時間にもよるな、と思い直す。


「ちなみに、こちらには何でお越しになりますか?電車ですか?車ですか?何時くらいに到着しますかね?」


『あ、いえ……』


知子は一瞬言い淀んでから言葉を繋いだ。


『実はもう、東京に来ているんです。今からタクシーを拾おうと思っていて……』
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