死が二人を分かつまで
伯父からの学費以外の仕送りは望めなくなってしまい、バイトを増やしたので以前より多忙になってしまったということもあるが、津田に禁止されているのだ。


ライブをする時間があるならその分ボイストレーニングを受け、ギターも本格的にレッスンし、この次人前に出るのは(つまりデビューするのは)もっと実力を付けてから、と取り決めをされたらしい。


その理由は最もであろうが、しかし、進藤はそれだけでは無いと思っている。


おそらく、さとしにしばらく姿を消させ、ファンに『あの少年はどうしたのだろう?』と思わせるのが狙いなのではないだろうか。


そしてある日突然、さとしがプロの歌手としてメディアに登場すれば、彼を渇望していたファンは狂喜乱舞する筈である。


あざとい男だ。


しかし、さとしは駅前広場でライブをしていて、普段も頻繁にそこを通っているのだから、ファンが気付いて声を掛けて来てもおかしくは無いのだが、今の所そういう人物は出て来ていないらしい。


やはり、普段のさとしは省エネオーラなので、気付かれにくいのだろうか。
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