死が二人を分かつまで
報告書はそこまでで終わっている。


それはそうだ。

もう、調査すべき事は何も無いのだから。


ここに書かれている事実は、中々ドラマチックな内容である。

しかし醜悪なスキャンダルという訳ではない。


むしろ、世間には美談として受け止められるかもしれない。


これを調べた調査員も、さぞかし自分の仕事ぶりに満足した事だろう。


「そうだよな…。まさか、想像もしてないだろうな……」


進藤は一人、ブツブツと呟いた。


「その父親と息子が、できちまうなんてな」


その言葉を口に出した途端、進藤は尋常じゃない息苦しさに襲われた。


体を折り曲げて、ゴロゴロと床を転げ回る。


必死に酸素を貪りながら、何故こんなに苦しいのか考えた。


何かの発作かと思ったがそうではない。進藤は今までの人生の中で経験した事のない、恐ろしい程の笑いの波に襲われていたのだ。


狂気じみた笑い声をあげながらのたうち回る進藤の脳裏に、さとしと出会ってから今までの出来事が走馬灯のように駆け巡る。


歌うさとし。

はにかむさとし。

驚くさとし。

困るさとし。

泣くさとし。
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