死が二人を分かつまで
そして………。


たった一夜だけ目にした、進藤の腕の中で熱い吐息を漏らす、この世の者とは思えないほど高貴で美しいさとし……。


笑い疲れ、酸欠に陥った進藤の目の前は徐々に霞み、意識が遠退いてきた。


『今度こそ、死ねるかもしれない』


進藤はまるで期待するかのように、ぼんやりとそんな考えを抱いた。


死を心から願うなど、愚かな考えだと思っていた。


人間はどんなに苦しくても辛くても、命の炎が燃え続ける限り、生に執着していなくてはいけないのだと。


しかし、今の進藤にはもう、その持論を押し通す必然性を見出だす事ができなかった。


今までの苦しい、辛いと思った出来事など、本当の意味での絶望を知った今となっては何と些細なエピソードだった事だろう。


すでに生きる屍と化した進藤は、意識を失う最後の最後、彼に向けて問い掛けた。


つくづく甘ったれで情けなくてぶざまな男だと、自分自身を嘲笑しながら。


『このまま俺がこの世からいなくなったら、さとし、君は悲しんでくれるだろうか……?』
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