死が二人を分かつまで
その夜、進藤は久しぶりに彼女の夢を見た。



狭いステージの上、黒のロングドレスを身にまとい、ピアノを背にして、お気に入りの歌を歌っている。



「小夜子さんて、ホント、その歌が好きだよね」



進藤はステージ上の彼女に話しかける。



「そうだよ。だって、この主人公って、すごくカッコイイと思わない?」



歌っている彼女が答えられるわけがないのに、進藤の耳元で彼女の声がやさしく響いた。



夢は不思議だ。



進藤は懐かしさに胸を締め付けられながら、必死にその夢を貪った。



できることなら、いつまでもずっと、彼女を見つめていたかった。
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