死が二人を分かつまで
「でも、内容まできちんと把握できていた訳ではなくて、大きくなってから祖父母や伯母に詳しい話を聞いたんですが」


そこでさとしは喉を湿らせるためか、コーヒーを一口含んで飲み下してから話を続けた。


「それによると、母は『この子の父親は亡くなった。歌手では食べていけないので違う仕事をしていたが、体を壊して辞めてしまった。この子のために、力を貸して欲しい』と、ひどくやつれた様子でお願いに来たそうです」


その場にしんみりとしたムードが漂う。


しかし進藤は、別の感覚に心を捕われていた。


鼓動が速くなる。


「伯父は最初は怒り心頭だったんですが、祖父母がとりなしてくれて、最終的には僕達を受け入れてくれました。母はすぐに医者にかかりましたが、それまでの無理な生活がたたり、回復しないままに数週間後に他界しました」


「そうか……。君、若いのに苦労したんだな」


「いえ。僕自身は苦労したという記憶はありません。それよりも、母が大変だったと思います。妊娠中に父が亡くなり、女手一つで僕を育て、あげく、体を壊してしまって。どれだけ心細かったかと思うと、胸が痛んで…」
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