シュアリー×シェアリー

01.3:夏美と春樹


 春樹が一緒に住むようになって、早いもので2カ月が過ぎた。
 当初は雪子のタバコを隠したり、灰皿を隠したりとこそこそと禁煙活動にいそしんでいた春樹だが、3回目にタバコを隠した時完全にぶち切れた雪子にぐうの音も出ないほどに言葉攻めされて以来、その活動はなりを潜めていた。 
 そんな春樹が撮影のため数週間家を留守にしているとき、夏美がDVDを持って帰ってきた。なにそれと尋ねれば、春ちゃんのDVDと嬉しそうに笑う。おっきくなったなあ、と呟きながらしげしげとDVDのジャケットを見つめる。
 春樹が夏美の事を好きなのは知っているが、同時に夏美は春樹を弟としてしか見ていないことも知っているので、なんとなく哀れになりながらそのDVDを横目で眺める。

「これねえ、春ちゃんとデートするっていうコンセプトのDVDなんだよ」
「…へえ」
 
 全くもって興味がないので、適当に話を聞いてジャケットに目をやると、普段の憎たらしい生意気な春樹からは想像もつかない表情で笑う春樹がプリントされている。普段、春樹が出演するTV番組や雑誌を見る事はかたくなに拒否されているので、春樹がいないうちにと思って夏美は持ってきたのだろう。しかし興味がない。

「そんなに人気なの、春坊」
「もーそんな呼び方するとまた春ちゃん怒るよー!なんか、ドラマちょい役で出てから人気でてるんだよねえ。感慨深い!」

 夏美のその子供扱いも拗ねると思うよ、と返すと不思議そうな顔をして首をかしげる。前途多難だなあ、とまた哀れになってため息をひとつついた。
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