シュアリー×シェアリー

01.4:stop,boy

「夏姉、おはよー」
 
珍しくオフの日、同じく大学が休みらしい夏美に抱きつきながら朝の挨拶をする。おはよお、と穏やかな笑顔で笑う夏美に癒されて、自分が夏美を好きな事を実感する。

「朝ごはん、出来てるよ」

 春樹が腰に抱きついたままの体勢で、キッチンに向かう。女子力が皆無の雪子と違って、夏美は家事全般が得意だった。基本的に朝食も夕食も夏美が作っている。外見も完璧、中身も完璧。こんな存在が身近にいるのに、他に好きな女なんて出来るか、と自分を正当化しながら夏美が作った朝食を口に運ぶ。

「んまーい!さすが夏姉!」
「ありがとー」
「そーいや、雪子は?」
 年寄りみたいに早寝早起きの雪子はいつも一番乗りで起床して、タバコをベランダでふかしているのにその姿が見えない。お茶をすすりながら夏美が首をかしげる。
「わかんない」
「…へえ、夏姉が雪子の動向しらないって珍しいね」

 なんか聞いちゃだめなオーラを醸し出していたんだよ…と落ち込む夏美は、異常なまでに雪子に依存している。春樹からしてみれば、なんであんな女にこだわるのか全くわからない。確かに年の割には大人な考え方をするし、仕事もできるようだが、夏美の方が全然いい女だと思う。

「合コンとかだったらどぉしよー」
「雪子、そういうのめっちゃ面倒くさがりそうだけど」

 雪子が合コンに参加している様子を想像して、笑いをこらえながら返すとユキもてるんだよ、と意外な答えが返ってくる。

「はぁ?夏姉のがもてそうだけど。俺は断然夏姉だけどな」
「雪子は結構がちで惚れられるんだよね、私はなんとなくちゃらちゃらした人が多いけど」

 脳内で夏美に言い寄る男の暗殺方法を考えつつ、相槌を打つ。そしてさりげなく告げた好意をスル―されたことは見ないふりをする。

「春ちゃん、ユキの事苦手だからえー?と思うだろうけど、ユキはもてる子なんだよー」

 さりげなく苦手意識を持っていることを指摘されて、ばつの悪そうな顔をする春樹に夏美が意地悪い笑顔を向ける。

「でも、知らない間に別れてたりするんだ。なんかユキの恋愛ってよくわかんない」
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