恋色カフェ
勝沼君は体を起こし、カタリと、右手に持っていたボールペンまで机に置いた。両手は膝の上にでも持っていったのか、真っ直ぐ、机の下へとのびている。
「ただ、」
何故か躊躇うように、区切ってから。
「彼氏とうまくいってるのかなーと思って」
勝沼君は俯き気味でそう言うと、さっきとは違う笑みを、口許に小さく広げた。
「何、で、そこで、彼氏が出てくるの?」
「……違うんすか?」
「違うよー」
「俺はてっきり、彼氏のことでも考えてたのかと」
違うって、と笑いながら言う。一瞬の動揺を悟られてはいないだろうか、と彼に探りを入れながら。
「高宮さんの彼氏、見てみたいなぁ」
ボソリと零した勝沼君の言葉に、いつも見てるよ、とはもちろん、言える筈もなかった。