恋色カフェ


勝沼君は体を起こし、カタリと、右手に持っていたボールペンまで机に置いた。両手は膝の上にでも持っていったのか、真っ直ぐ、机の下へとのびている。


「ただ、」


何故か躊躇うように、区切ってから。


「彼氏とうまくいってるのかなーと思って」


勝沼君は俯き気味でそう言うと、さっきとは違う笑みを、口許に小さく広げた。



「何、で、そこで、彼氏が出てくるの?」

「……違うんすか?」

「違うよー」

「俺はてっきり、彼氏のことでも考えてたのかと」


違うって、と笑いながら言う。一瞬の動揺を悟られてはいないだろうか、と彼に探りを入れながら。



「高宮さんの彼氏、見てみたいなぁ」


ボソリと零した勝沼君の言葉に、いつも見てるよ、とはもちろん、言える筈もなかった。



< 145 / 575 >

この作品をシェア

pagetop