恋色カフェ

宣戦


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扉の開く音と、失礼します、という声が、遠くの方で聞こえた──。



ここは、防音という訳ではないけど、セキュリティの関係上、壁や扉が他の部屋よりも厚く出来ている。

それは、昔働いていた時から聞かされていたこと。だから、以前も内緒の話は大抵ここでされた。


勝沼君が休憩時間にここを使ったのも、そういう理由からだっただろう。


もう一度、カチャン、という音が聞こえて、私は小さく息を吐いた。



こんなところで、ビクビクして。私は、一体何をやっているんだろう。


人に顔向け出来ないようなことをした覚えはないのだから、堂々としていればいい。


……そうとわかっていながら、事務所にタイムカードを押しに来る早番を避けようと、倉庫に逃げ込んでいた。


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