恋色カフェ
◇歪な形

逃避


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「ここ、なんすけど」


勝沼君の“お誘い”から数日──。

私は彼に連れられるまま、勝沼君の馴染みの店だというダイニングカフェの前まで来ていた。



「“Con te”……聞いたこと、ある」

「ほんとっすか?」


誰から聞いたんだっけ、なんて、考えるまでもない。店名と一緒に思い出されたのは、彼の──店長の声。



『“Con te”っていうカフェも、結構いいコーヒーを出すんだ』


目を輝かせながら話していた姿が、脳裏に浮かぶ。

偶然なのか。それとも、店長がきっかけをつくったのか。


……って。

今日は店長のことなんか考えまい、と思っていたのに。


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