恋色カフェ
晩御飯に誘われたあの日は、ちょっと考えさせて、と保留にした。
断ることも出来た。でもそれをしなかったのは、私のズルさ。
──────と、弱さ。
気がつけばいつからか、店長は万由さんのことを『土屋』と呼び捨てするようになっていた。
毎日毎日、2人きりで遅くまで残業していれば、距離が近くなっていくのも当たり前なのかもしれない、けど。
遂に、店長と仕事のことすら話さなかった今日、私は勝沼君に返事をした。
逃げだと言われても、この、どうにもならない感情を一旦海の底に沈めてしまいたかった。
泣き喚き、ありったけの醜い言葉を店長に吐きつける、なんてことだけは避けたくて。
そんなことをしたら、完全にあの人の中で私は“無かったこと”にされてしまう。