恋色カフェ
「店長に“あいつ、勿体無かったな”って思わせたくないの?」
「……は?」
「仕事で見返してやろうとか、思わないの?」
「もう、そんなのどうでもいいわよ……」
「へえ。私にあんな啖呵切った割には、大したことなかったね」
私の挑発にも、万由さんは黙っている。
「とにかく。このままあなたを逃がすつもりは無いから」
立ち上がり、万由さんの腕を掴むと、彼女は驚いて肩を上げた。
「ちょっと、もうやめてよ!」
彼女は腕を引いて、私の手から逃れようと暴れる。私は振りほどかれまいと必死で力を込めた。
「怜ちゃんも心配してた。万由さんには本当にお世話になったって。このまま万由さんがいなくなるのは辛いって」
万由さんは私の言葉にぴたりと動きを止める。どこか違うところへ意識が飛んだような、気の抜けた顔をして、へなりと腕からも力が抜けた。
「……離して」
ポツリと落とされた言葉も、弱々しい。
「駄目」
「逃げないから……」
「信用出来な、」
「嘘は、言わないから」