恋色カフェ


「店長に“あいつ、勿体無かったな”って思わせたくないの?」

「……は?」

「仕事で見返してやろうとか、思わないの?」

「もう、そんなのどうでもいいわよ……」

「へえ。私にあんな啖呵切った割には、大したことなかったね」


私の挑発にも、万由さんは黙っている。



「とにかく。このままあなたを逃がすつもりは無いから」


立ち上がり、万由さんの腕を掴むと、彼女は驚いて肩を上げた。


「ちょっと、もうやめてよ!」


彼女は腕を引いて、私の手から逃れようと暴れる。私は振りほどかれまいと必死で力を込めた。


「怜ちゃんも心配してた。万由さんには本当にお世話になったって。このまま万由さんがいなくなるのは辛いって」


万由さんは私の言葉にぴたりと動きを止める。どこか違うところへ意識が飛んだような、気の抜けた顔をして、へなりと腕からも力が抜けた。


「……離して」


ポツリと落とされた言葉も、弱々しい。


「駄目」

「逃げないから……」

「信用出来な、」

「嘘は、言わないから」


< 500 / 575 >

この作品をシェア

pagetop