記憶混濁*甘い痛み*

指が触れたのは、どちらが先だったのか。


あの日から…条野さんの姿を見ない。


逢わなくてすんだ……  

1日めはホッとした気持ちが…2日めには戸惑いに変わり…3日めには不安になった。


別に今までも……3日位見かけない事はあったのに。


4日めに彼の事が気になって切なくなり…5日めには胸が苦しくなった。


この『想い』を、なんと言えばいいの?


愛しているのは、お兄様

お兄様の筈なのに…私…条野さんの姿を…探してしまっている。


好きなのは…愛しているのは、お兄様。


でも。


だとしたら…今この胸をざわつかせる気持ちは何という感情なの?


この胸の痛みを…この胸の切なさを… 


どうかイエスさま…お清めになって。


友梨は…罪を…犯している。きっと…既に。


……6日め


どうしても我慢が出来ずに、友梨は回診の時に狩谷を掴まえ問いかける。


「……どうして?」


友梨の問いに返ってきたセリフは、しごく真っ当なものだった。


確かに人妻の友梨が夫以外の男の行動を把握する理由などない。
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