記憶混濁*甘い痛み*
------その日から。
しばらく友梨の精神が安定する事はなかった。
5才前後の幼児期から始まり、今現在の22才まで。
高熱のせいもあるのか、発言する言葉の内容と態度に、一貫性がない。
人格が違う訳ではなく、年齢ごとに、発言する内容が変わっている。
家族に愛され幸せな幼児期。
後継者問題で家族間に溝ができた、孤独な思春期。
記憶に瘡蓋があり、目を醒ます度に悲鳴をあげる、今現在の成人期。
ただ、その発言の中で。
和音の名前が出ることは、ほとんどなかった。