祐雫の初恋
 
 祐雫は、クラシックの名曲が流れる中、

自身の殻に籠って、唇を噛み締めていた。



 優祐は、そっと祐雫の手に触れて、ほほ笑んだ。


(祐雫は、祐雫でしょ。

 普段の祐雫のままに振る舞って)


 優祐は、こころの中で囁いた。


 双子の二人には、言葉はなくても相通じるものがある。


 祐雫は、頷きながら、優祐の手を握り返す。


(ありがとう、優祐)


 祐雫は、慶志朗に逢う度に

自分らしさを出せなくなってしまう自分に困惑していた。


(おばあさまの初恋ドレスが泣かないように、

 祐雫は、祐雫らしくありとうございます)


 祐雫は、曲の盛り上がりととに音楽会を楽しむ気分へと

自身の気持ちを切り換えていった。

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