定義はいらない

別離

私と松木先生は和解をした。


ただし、「友達」になったとしても

そう簡単にはいかない。


男はセックスのことなんて射精とともに忘れてしまうかもしれないけれど

女は事細かく情事については覚えているものだ。


ましてや、松木先生と太朗ちゃんはずっと一緒に病棟をウロついていて

心中穏やかでいられるはずがなかった。


「私の兄弟たち」

心の中で2人のペアをそう呼んでいた。


友達になっても、別に連絡を取り合うわけでもなければ

病棟で仲良く話し込むわけでもない。


ただ、元に戻っただけだった。

つまり、医師と看護師の関係。

うまく言いくるめられただけ。


松木先生はいいところの坊っちゃんで

いつかは親の病院を継いでいく。

昔から彼女は女医さんと決まっていて

私の出る幕はなかった。

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