定義はいらない

太陽

夕方ではあったけれど

まだ日はあった。

松本城は国宝の風格があって

松本市を見守っている。

黒塗りの天守閣は堂々としていてかっこいい。

「どうだ、松本城。」

「かっこいい。」

密かにお城大好きな私は

城内の庭を散歩しているだけでテンションが上がる。

もう閉館時間が過ぎているので

城内の見学はできない。

以前、松本城に来たことがあるが、それはたしか大学4年生のときで

遥と一緒だったことを思い出す。


「もう中には入れないけどなぁ。」

そう言って2人で散歩をする。

じゃりじゃり。

2人分の足音。

足元を見ると

松木先生は先の尖ったサンダルを履いていた。

初めて見た。

男物の尖ったサンダル。

それを見て笑える。

5月末の長野でサンダルなんて。

私は長袖のブラウスにカーディガンを羽織っていた。

それでも肌寒い。

松木先生は半袖。

「寒くない?」

「大丈夫大丈夫。」

明らかに寒そうなのに強がる。

可愛いなと思って笑ってしまう。
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