定義はいらない
「どうしたんですか?」

ステーションに戻ると今夜一緒に夜勤を組んでいる後輩が

驚いた顔で私を出迎えた。

「なんか落ちてません?」

「落ちてる。」

隠せるほど気丈に振舞えずに私はステーションの机に突っ伏す。

「何かあったんですか?」

「ねぇ、『真実』ってなんだろうね?」

「え?」

「『真実を教えろ』って人に言われてさ。『真実』ってなんだろね。」

後輩は眉間に皺を寄せて考え込む。

「よく分からないですけど、
 鈴木さんがその人に伝えたことが『真実』なんじゃないですか?
 それを信じるかどう受け取るかはその人次第です。」

「そうだよね。」

「そうです。」

「ありがとう。」

「いいえ。何もしてませんよ。」

1つしか年が変わらないのに後輩はその後何も聞かずに休憩に入った。

大人だな。

それとも私が子どもなのか。

松木先生が子供なのか。


とりあえずこの夜勤はやり遂げよう。

明日、再度電話をかけよう。

それで伝わらなければそれで終わりだ。

私は両手で自分の両頬をピシピシ2回叩いた。
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