定義はいらない
「帰りたいの?」

これだから遥は何でも私のことが分かってるって思う。

「うん。」

私は伝票を手にとってきっかり4分の1テーブルにお金を置いた。

「悪いんだけど。」

そう言って立ち上がった。

「じゃあ、遥おめでとう。またね。」


3人に手を振るが早いか私はすぐに店を出た。


店を出てタクシーに乗った。

終電までには時間はまだまだあったけど

1分1秒でも早く家に帰りたかった。


「今まで友達と飲んでいたからこれから焼き肉は無理です。
 今から家に帰ります。」

ドキドキして携帯の電源を切りたくなった。


返信が来なかったら?

いや、来たらどうする?


選択を迫られていた。


10分後、家に着く頃に返信があった。


「じゃあ今から家に行こうかな。」


返信の内容に逡巡したかどうかの記憶はない。


分かっているのは

「来ますか?」

そう返信したことだった。
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