シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
ベッドの上で震えている華奢な身体の少女。

まるで何かに脅えているようだ。

自らの身体をきゅっと抱いて俯き、涙を零している。



その様子を鋭い眼光で見つめているブルーの瞳・・・。



全ての物を射るような鋭い光を放っていたその瞳が

僅かに一瞬和らいだかに見えた。


そして思案気に瞳を伏せた後重厚な扉に顔を向け、廊下にいる使用人を呼んだ。



「メイ」




シーンと静まり返った部屋の中で響くその声に弾かれるようにサッと扉が開く。


姿を見せたのは黒のワンピースにエプロン姿のメイドのような少女。

きっちりと編み込まれた赤毛の髪はシンプルな髪飾りで留められている。

少しそばかすのある頬にブルーの瞳のかわいらしい少女だ。

年はエミリーと同じくらいにみえる。



「アラン様。お呼びですか」

メイと呼ばれた少女は青年に向かって軽く膝を折って挨拶した。



「この者に温かい食事を。あと、着替えさせたら執務室に連れて来い」



「かしこまりました。アラン様」


アランはもう一度エミリーの方をちらっと見ると足早に扉の向こうに消えて行った。


アランに命じられたメイはベッドの上で震えているエミリーを心配そうに見ると

キッチンまで食事を取りにパタパタと部屋から出て行った。



残されたエミリーは1人で震えて泣いていた。
< 14 / 458 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop