シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
メイは唖然としながら護衛の顔を見つめた。
確かにアラン様は正装をされて昼過ぎに出かけられた。
それはご令嬢を迎えに出かけられたわけで、エミリー様を迎えに出られたわけではない。
第一エミリー様の部屋は、もう片付けてしまって使えなくなってる。
私は新しい方にお仕えするのだもの。この話を信じたいけれど、ぬか喜びはしたくない。
そうじゃなかった時のショックが大きい―――
メイは哀しげに瞳を伏せた。
「アラン様がエミリー様を迎えに行くだなんて・・・そんなことないわ。だって、エミリー様のお部屋は片付けてしまったもの。アラン様はお妃候補のご令嬢をお迎えに行かれたのよ」
「そうか?それはおかしいな・・・じゃ、あいつの言っていたことは何なんだ・・・」
護衛は首を傾げて瞳を伏せた。
そこに侍女長がイソイソと廊下の向こうから近付いてきた。
「メイ、早く玄関にいらっしゃい。アラン様の馬車が城門を潜られたそうよ。喜びなさい、エミリー様もご一緒ですよ」
瞳を見開くメイに、侍女長は優しく微笑んだ。
「メイ、あなたに黙っていてごめんなさいね。実は―――」
―――・・・少し、痩せられたかしら。
この数日間、どんなに寂しかったか。エミリー様のいない塔は寒々としていて、城中の灯が消えたようにどんよりとしていた。
使用人や料理長はもちろん、食堂の給仕係や護衛までずっと元気がなかった。
そう言えば、料理長がここ数日間の朝食は、ずっと執務室に持って行ってるって言ってたっけ。
アラン様が忙しいからだと思っていたけど、ひょっとして、やっぱりエミリー様がいないからとか・・・
え、そんなまさか、あのアラン様が・・・そんなことないわよね
いつも冷静で冷たい威厳を放っている姿からは”寂しい”などと言う感情を持つとは、とても想像できない。
人垣の中に料理長と給仕の姿が見える。料理長は大きな体を窮屈そうに屈めて頭を下げてる。隣では給仕の人が目頭を押さえてるわ。
アラン様はすごく大切そうにエミリー様を抱えているように見える。
やっぱりアラン様はエミリー様のことを・・・?
腕の中のエミリーを気遣いながらゆっくりと階段を上ってくると、アランはメイと侍女長の前で立ち止まった。
「3階の部屋の準備は出来ているか?そうでなければ、私の寝室に連れて行く」
威厳のあるブルーの瞳が侍女長を見下ろす。
丁寧に頭を下げたあと腕の中で眠るエミリーを見て、侍女長は柔らかく微笑んだ。
「仰せの通り、準備致してございます。すぐにお使いになれますよう、寝具も整えてございますからどうぞそちらに」
「ご苦労。メイ、急なことに忙しかったであろう。侍女長、パトリックに言付けを頼む。”例の物は執務室に持って参れ”と。・・・部屋に参る、メイ―――」
確かにアラン様は正装をされて昼過ぎに出かけられた。
それはご令嬢を迎えに出かけられたわけで、エミリー様を迎えに出られたわけではない。
第一エミリー様の部屋は、もう片付けてしまって使えなくなってる。
私は新しい方にお仕えするのだもの。この話を信じたいけれど、ぬか喜びはしたくない。
そうじゃなかった時のショックが大きい―――
メイは哀しげに瞳を伏せた。
「アラン様がエミリー様を迎えに行くだなんて・・・そんなことないわ。だって、エミリー様のお部屋は片付けてしまったもの。アラン様はお妃候補のご令嬢をお迎えに行かれたのよ」
「そうか?それはおかしいな・・・じゃ、あいつの言っていたことは何なんだ・・・」
護衛は首を傾げて瞳を伏せた。
そこに侍女長がイソイソと廊下の向こうから近付いてきた。
「メイ、早く玄関にいらっしゃい。アラン様の馬車が城門を潜られたそうよ。喜びなさい、エミリー様もご一緒ですよ」
瞳を見開くメイに、侍女長は優しく微笑んだ。
「メイ、あなたに黙っていてごめんなさいね。実は―――」
―――・・・少し、痩せられたかしら。
この数日間、どんなに寂しかったか。エミリー様のいない塔は寒々としていて、城中の灯が消えたようにどんよりとしていた。
使用人や料理長はもちろん、食堂の給仕係や護衛までずっと元気がなかった。
そう言えば、料理長がここ数日間の朝食は、ずっと執務室に持って行ってるって言ってたっけ。
アラン様が忙しいからだと思っていたけど、ひょっとして、やっぱりエミリー様がいないからとか・・・
え、そんなまさか、あのアラン様が・・・そんなことないわよね
いつも冷静で冷たい威厳を放っている姿からは”寂しい”などと言う感情を持つとは、とても想像できない。
人垣の中に料理長と給仕の姿が見える。料理長は大きな体を窮屈そうに屈めて頭を下げてる。隣では給仕の人が目頭を押さえてるわ。
アラン様はすごく大切そうにエミリー様を抱えているように見える。
やっぱりアラン様はエミリー様のことを・・・?
腕の中のエミリーを気遣いながらゆっくりと階段を上ってくると、アランはメイと侍女長の前で立ち止まった。
「3階の部屋の準備は出来ているか?そうでなければ、私の寝室に連れて行く」
威厳のあるブルーの瞳が侍女長を見下ろす。
丁寧に頭を下げたあと腕の中で眠るエミリーを見て、侍女長は柔らかく微笑んだ。
「仰せの通り、準備致してございます。すぐにお使いになれますよう、寝具も整えてございますからどうぞそちらに」
「ご苦労。メイ、急なことに忙しかったであろう。侍女長、パトリックに言付けを頼む。”例の物は執務室に持って参れ”と。・・・部屋に参る、メイ―――」