シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
ほんの、今の今まで3階の部屋の準備をしていたメイ。

「ここ、アラン様のお妃候補の方がお使いになるそうですね。どんな方かご存知ですか?」

新人のメイドは、少しふくよかな身体をテキパキと動かしながら、メイに訪ねた。

箱の中には沢山のドレスや装飾品が入っていて、二人でそれを整理しながら、ひたすらクローゼットに仕舞っていた。


「嘘でしょう?お妃候補の方が、ここに?初耳だわ。それ本当なの?」

メイは思わず手を止めて、新人メイドのナミを見た。


「はい。メイさんを待っている間、侍女長がそう話してくれました。何でもアラン様が急にお決めになったとかで・・・。このドレスも急なあつらえに、出入りの仕立屋が大急ぎで準備したみたいですよ。まだ後日に新しいドレスが何着か届けられるそうです。今日迎えに行かれてるらしくて、急いで粗相なく準備するようにって」


・・・確かにアラン様の寝室の隣のこの部屋は、調度品も豪華で部屋の広さも申し分ない。


正室か側室の方が使われる部屋に相応しい。

アラン様ももうお年頃だし、そういう方をお迎えしてもおかしくは無い。

だけど、こんなに急に・・・しかも今日お迎えに?

まだ正室にもなられていない方を、候補の段階でアラン様の寝室のお隣にお迎えするなんて。

もう候補では無くて決まっているようなものだわ。

よほど気に入った方なのか。

それとも以前から決まっていたのを早めたとか・・・。

こんなに急いで準備させるなんて、どこのご令嬢なのかしら。


エミリー様。本当にもう、戻られないんですね・・・。


この部屋の準備を命じられたということは、私がそのご令嬢のお世話をするということ。


エミリー様以外の方にお仕えするなんて―――


「私は箱を片付けてくるわ。ナミは掃除をお願い」

ナミに指示をして瞳を寂しげに伏せながら、箱を持ってトボトボと廊下を歩いていた。

すると、メイの姿を見つけた護衛が嬉しそうに笑うと駆け寄って来た。

「メイ!エミリー様が戻られるって本当かい?」

「え?嘘・・・エミリー様が戻られる!?冗談でしょ?」

瞳を大きく見開き、護衛の顔をまじまじと見つめた。そんな、とても信じられない。

「あれ?メイなら知ってると思ったんだが・・・」

「何のことなの?私何も知らないわ」

「いや、今、兵達の間ではこの話で持ちきりだ。アラン様がエミリー様の居場所を突き止めて、パトリック様と一緒に連れ戻しに向かわれたと。もう夕暮れだから、そろそろ帰城されるんじゃないかって。私も含めて、兵が皆そわそわしているぞ」
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