シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
政務塔の玄関に向かうアランの手の中の預言書から、ミントグリーンの紙がヒラヒラと舞い落ちた。


「アラン様、何か落ちました」


ウォルターがそれを拾い、中身を一読して顔色を変えた。

足早に歩いていくアランの前にまわると、立ちはだかった。


「アラン様、お待ち下さい。これは、エミリー様のことで御座いますね?エミリー様は本当に、もう戻られないのですか。もう戻る術はないのですか?」

「彼女はもう戻らぬ。この国での役目は終わったと、ここに在るべき者ではないと、そう申して帰った」

「ですが、アラン様はそれで良いのですか!?」

「良い」


「良くは御座いません!あなた様は、昨日からろくに食事もなさらず、眠ってもおられないご様子。前回エミリー様がいなくなった時と同じ状態では御座いませんか!私は、心配しているのです!」


「ならば、ウォルター、君は止められるのか?家族の元に帰りたいと願うのを、引き留めることが出来るのか?・・・私には出来ぬ―――もう良い。私のことは気にするな」


「アラン様―――そうは参りません!」


ウォルターの手が下ろされ、掌からミントグリーンの紙がヒラヒラと舞い落ちた。


「では、せめてきちんと食事をなさって下さい。それと、フランクに薬を処方させますので、それをお飲み下さい」


「――――分かった」


政務塔の玄関に入っていく二人。

玄関前の広場には、ミントグリーンの紙が風にヒラヒラと舞っていた。




「何だこれ?おい、これ読んでみろよ」


使用人が掃除の手を止め、紙を拾って、一緒にいた者に見せた。



「何?何だ・・・あーっと・・・難しいな―――


『遠き光りの彼方より金と紫の乙女が舞い降りぬ。

この者天の力を持ち、人々の心を魅了せん。

その者、月に誓いし日遠い昔の願い叶えたり。

その後国に滞在し、起こりし国の騒乱を「静まるが良し」と唱え賜い、声の力で沈めんとす。

かくて騒乱収まり、すべての民は乙女の元にかしずかん。

この者心より仕えし主、後に世界を統べる王となりぬ』


―――だってさ」


「何だ?どういう意味だ?難しくてよく解らんな」


「あぁ、良くできた、ただのイタズラ書きだろう。そんなものは棄てておけ」


「そうだな」



使用人は紙をくしゃくしゃに丸めてポケットの中に入れた。
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