シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
“おはようございます。エミリー様、今日もいい天気ですよ”


――ん・・・メイの声?なんだかいつもと違うわ。

それに、カーテンを開ける音が聞こえる。


珍しいわね・・・?

いつも、わたしが起きてからでないと、カーテンを開けないのに・・・・。



「・・・メイなの?・・・・今日は早いのね・・・」


うっすらと開いたアメジストの瞳にぼんやりと映った、何の特徴もないクロス張りの白い天井。



―――うそでしょう・・・・?天蓋がないわ。ここはどこ?わたし、また知らないところで眠ってしまったの?



「エミリー、起きたか?」



「アラン様・・・?」



「エミリー、私だ。君のパパだよ」



「パパ・・・・?」



アラン様じゃない・・・そうだったわ・・・。

わたし、家に帰って来たのだった。


ここにはアラン様も、メイもいない。



「おはようエミリー」


「パパ、ママ、おはよう。どうしたの?二人して・・・朝から娘の部屋で何してるの?」


ジャックはベッドの脇に置いてある椅子に座り、エレナはカーテンを開けた後、ジャックの向かい側に立っていた。


「あーっと、なんというか・・・私達は、エミリーが心配なんだ」


「朝起きたらいなくなっているんじゃないかって。ジャックが言うものだから、不安になって・・・また、呼ばれてしまうんじゃないかって」


「パパったら・・・もう大丈夫よ。願いは叶ったんだもの。もう呼ばれないわ。そんなに心配しないで」


「それならいいんだが」


エミリーは笑ってはいるが、どこか哀しそうに見える。

それはきっと、昨日話してくれた、ギディオンとかいう国を想っているせいか。

さっきもアランという王子の名を口にしていた・・。

ジャックはベッドの上で身体を起こし、エレナと話しているエミリーを観察するように見ていた。

身体から出ている光は日の光に当たれば目立たないが、薄暗いところに行くと、ほんわりと光っているのが分かる。

あれは、そのうち消えるのだろうか。


或いは、このままずっと――――


「じゃ、着替えたら降りてらっしゃい。ジャック下に行くわよ」


ジャックとエレナが階段を降りていく音が聞こえる。

エミリーはベッドの上で小さなため息を吐いた。



――家に帰って来たのに、寂しいって思うなんて、おかしいわね・・・。

心にぽっかりと穴が開いてるみたい。
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