36.0℃の熱帯金魚
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メトロを乗り継いで、お気に入りの店に到着。
晴天のおかげか、街角は賑わっていた。
家族ずれ、友達同士、そしてカップル。
繋がれた手が、ちょっと眩しい。
ショーウィンドウには、パステルカラーの服たちが並んでいた。
明るく。
軽く。
春らしく。
やっぱり、金魚なんて、ない。
ところで、金魚っぽいコートってどんなだろう……、
「あれ? マリちゃん?」
突然の声。
振り向くと、そこには……、
「ハジメ先輩?!」
大学時代の先輩が立っていた。
カジュアルな休日の服装に身を包んで、驚きの表情を浮かべている。
「うわー、大人っぽくなったねー。髪、伸ばしたんだ」
「どうも。先輩は……、相変わらずですね」
「なにそれ」
「いい意味ですよ」
「なら、いいけど」
そこで、お互いに笑いあう。
ハジメ先輩は、スポーツマンを思わせる爽やかな笑顔で、パっとまわりを明るくする。
心地良い夏の日の、太陽みたいな人だ。
変わらない、気軽なテンポ。
あたしの心はグングン昔に戻っていく。
大学、1年生の頃に……。