美味しいプライド
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新着日記アリの文字に誘われてかなえのブログを開いていきなり目に飛び込んできた、およそ穏やかじゃない文字の羅列を見て、由美は正直引いてしまった

「今日、六本木でしつこいキャッチに付きまとわれた。
「君みたいな清楚可憐な人を探していたんだ!」
とか言って、あいつバカ?
清楚も何も、お前キャバクラのキャッチじゃん。キャバ嬢に清楚もなにもなくない?
ほんとイラつく。
男の人ってさ、昼は聖女、夜は娼婦っていうのが理想とかいうけど、ほんとキモい。
そういう女が一番ヤバいのに。清楚な顔してひた隠しにしてる欲って、表にでちゃってる奴のより全然汚いのにな・・・」

「大丈夫かよ、こいつ。」

由美は思わず舌打ちして、もっとよく読もうとブラウザのサイズを最大にした
気でも狂ったか太田かなえ。
かなえや私が最近はまっているブログ、PIXIは、インターネット上の交換日記みたいなものだ。
日記の内容を、自分が承認した友人だけに公開するのか、会員全員に公開するのかを選ぶことができる。
お望みならば自分の写真も貼れるスペースもあって、かなえのページには2年前ミスキャンパスになったときに撮った、とろけそうにでっかい垂れ目をウルませたお姫様みたいな写真が貼られていて、現在約100万人の会員全員に絶賛大公開中だ。
ネットに顔写真なんて、いまやひと昔前のプリクラ並みに、どいつもこいつもペタペタ貼りつける時代だから別にそれはかまわないんだけど、問題はこいつが日記を誰に公開してるのかってことだ。
恐る恐るスクロールして、トラックバックに目を走らせる。

「kazukazuの発言:いやぁ。かなえさんは可愛いだけじゃなくてすばらしい洞察力っ
すねぇ。女の欲望の話、目から鱗っす。あ、はじめまして、村上春樹コミュニティからきたkazukazuですm(_ _)m足跡ペタペタ」
「全体公開してんのかよっ」
由美はあきれはてて、思わず物言わぬ画面に向かって突っ込んだ・・・
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