赤い狼 四





ポリポリと頭を掻く。



だってよー、このままじゃあ止まっちまったまんまだからよ。




お前も、俺も。



突き進もうじゃねぇか。



過去から一歩、あの日から一歩、脱け出して。





「……俺はあの女を、許さねぇ。」



「でもあれは妃菜ちゃんがしたんじゃねぇ。」



「でも、元はと言えばアイツが悪い!俺らを騙してたのは事実だ!」



「奏が妃菜ちゃんをいつまでも恨んでちゃあ誠也も安心して墓ん中で眠れやしねぇ。」



「恨まなくなったら誠也を裏切った事になるだろうが!!」



「なんねぇよ!!」




煙草を地面に投げ捨てて叫ぶ。



自分が予想していたよりデケェ声が出て正直少し、驚いた。




「なんねぇよ。お前がここん中で誠也を想ってる限り。裏切る、なんて。」




トントン、と奏の左胸を軽く拳で殴る。




「でも…っ、」



「なんねぇっつってんだろーが。俺の言うことが信じられねぇのかよ。


恨みや憎しみの先には何も生まれねぇんだよ。よって、今のお前がしている事は…無意味!!!分かったか!上を見て歩け!」




グシャグシャともう乱れすぎている奏の髪を掻き乱す。


鳥の巣、というより爆発事件だ。





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