赤い狼 四
「稚春がヤル気になってるのって珍しいね。」
「そう?さっきもヤル気満々だったよ。」
棗がお皿に出来上がった野菜炒めを移しながら微かに笑う。
そんな棗と会話をしながら中華スープの材料を冷蔵庫から取り出す。
「まぁ、稚春はゲームと料理は好きだからね。」
「な、なんかそれしか出来ないみたいじゃん。」
「実際そうでしょ?」
違うの?と首を傾げられて、
うっ!
と言葉を詰まらせれば棗がクスクスと楽しそうに笑った。
もう!意地悪なんだからっ。
そう思いながらもニヤけてしまう顔に、慌ててビンタを食らわせた。
「…え。どうしたの?」
「何でもございませぬ。」
「いやいや。何かあったんでしょ、その動揺。」
「動揺なんぞしておりませぬ。
ましてや、棗が私の事をよく分かってくれていて嬉しかったなど思っていませぬ。」
「あぁ、だからさっきニヤけてたの。」
この時、私は誓った。
動揺した時は何も喋らない、と。