赤い狼 四

:元カノの存在







――――――「じゃあ冬休みを楽しむように。」






どことなくそわそわした雰囲気の中、薄い髪の毛を頭に纏った担任の先生が長い話を終えた。



その瞬間、この教室に居た女の子達がざわざわと騒ぎはじめて席を立つ。



ラッチョ先生は「お~寒い。」腕を擦りながら教室を出ていく。先生、私は体より頭が寒そうだと思います。



そう言ってやりたい気持ちを胸の中で止めて、クラスメイトがもう半分くらい居なくなった教室を見渡して息を小さくつく。



そして視線を黒板に向けると、黒板いっぱいに色んな色のチョークで"今年こそ彼氏作る!"とか"私らの友情は世界一!"などの落書きがされているのが目に入った。




そのまま右へと視線を動かす。すると、右端に小さく書かれた今日の日付。



12月24日。今日で冬休みが始まる。





「冬休み、ねぇ…。」





無意識に溢した言葉がぽつりと床に落ちる。



冬休みに入ったら《SINE》に居る時間が増えちゃうなぁ…。




嫌だな、という気持ちと今度こそ皆揃って過ごせるかな。という気持ちが交差してなんとも複雑な気持ちになる。




――――あれからまだ、"妃菜ちゃん"は見付かっていないらしい。





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