死せる朝日の会
俺は高柳周一ではない、そして、きっと今のあいつも神崎妙子ではないだろう。 そして、妙はその事実を鮮明に理解しているのだ。おそらくさっきの謎の男も関係者である可能性が高いな。記憶は無い、それに証拠も根拠も無いが、俺達はここにいるべき人間ではないのだろう。
「わからない。だけど…、俺は高柳周一じゃない…、そんな気がする。」
それを聞いた妙は、下を向いて泣き出した。
「結局、もう駄目なのかな? きっとこれは諦めろって事だよね。 それとも初めから結果が決まってたんじゃないの? こうする事が私達に与えられた罰なんだよ、きっとそうだよ。」
俺は泣いたままの妙に、何て声を掛けたらよいのかわからずに立ち尽くしていた。その時、ふいに背後からの気配を感じて振り返った。
「この前の夜の時もそうでした、勘の鋭い人ですねあなたは。」
そこに立っていたのは、さきほど俺の部屋に現れた謎の男だった。そいつは左手に持っていた封筒を、俺に差し出してこう言った。
「とりあえず落ち着いたら読んで下さい。」
俺に封筒を手渡すと、男は振り返って歩き始めた。すると、泣いていた妙は、ゆっくりと顔を上げてから。
「あなた五社の誰?」
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