貴方の愛に捕らわれて
 

……パタリ―――


ドアが閉まって藤野さんの姿が完全に見えなくなると、強張っていた体からゆるゆると力が抜けてゆく。



それと同時に、無意識に止めていた息を吐き出し、ソファーに埋もれる。



いまだ凍りついたままの思考は、ただ一つのことに捕らわれぐるぐる回る。



どうして?どうして?どうして―――



何故なら藤野さんの勤務時間は、朝の六時半からお昼までと、午後四時半から午後七時までなのだ。



飾り棚の上に置かれた時計を見れば、時刻は九時を回っていて、何時もならとっくに帰っていない時間。



それなのに、どうして?



不意に先ほどの光景が脳裏を過ぎった。



―――お夕食の用意が整っておりますが、如何されますか



私の為に待っていてくれた……?



 

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