貴方の愛に捕らわれて
『今日は急に真夏のような暑さになったから、花がもたなかったのだと思います。
花器には十分な水が入っていて、手入れされていましたから、誰の所為でもないと思います』
俺を含めその場にいた全員が、香織の聡さに思わず絶句した。
組の事は見せないようにしていたのだが、何を言わなくても分かっているのだ。この後、部屋を準備をした奴が責任を問われ、厳しく叱責を受ける事を。
それだけじゃない。叱らないようにと頼んだ相手が、俺ではなく龍二達なのだ。
香織は自分が唯一、俺に何か強請れる立場である事を自覚していて、それをする事で組の秩序を乱してしまう事を理解しているのだ。
「今回は特別に香織に免じて、口頭による厳重注意でいい」
姐としての自覚を見せた香織に、俺は上機嫌で言い放つと、嬉しそうにパアッと顔を輝かせた香織を抱き寄せ、その柔らかな唇を貪った。
そして、真っ赤になって視線を泳がす姿を見ながら、これからは無理がない程度に組の事に関わらせてゆくのも悪くないと、考えを改めた。
猛 side end