怪談
2時
睡眠中に起こる体感現象を『夢』という。

悪夢・夢中夢・過去夢・予知夢・正夢・願望夢、様々あるが、どれも科学的に解明されない不可思議なものに変わりはない。

夢とは何なのだろう。



同僚の友人の話をする。



Dさんという女性である。

彼女はここ数年、夏から秋にかけて何度も繰り返して見る夢があるという。


夢の中で彼女はどこぞの家の仏間に立っている。

素足に畳が気持ちいい、と思いながら足元を見ると、足元より先に自分の着ているキャミソールの柄が目についた。

蛍光色の水色と黄色のボーダーという奇抜なデザインに、こんな服持ってたかなあと首をひねっていると、背後に人の気配がする。

振り返るとそこに、男がいた。

男はDさんより頭ひとつぶん程身長が低いようだった。

自分もそんなに高いほうではない上女なのに、随分小さな男の人だな、と思い何気に下を見て、彼女は息を飲んだ。


足が
ぐにゃぐにゃだ。

通常すっと伸びている筈の両の足が、まるで車に何度も往復で轢かれた後のようにぐにゃぐにゃなのである。

男性の身長が低いのは、奇妙にねじれた足が正規の彼の身長を保てていないからだとDさんは思った。

彼女は一も二も無く逃げ出した。

彼は誰だろうという疑問より、なぜあんな足で立位を保てるのかという根本的な恐怖が強かった。

少しでも離れたい。

だが、そんな彼女の願いとは裏腹に男性は無言で追ってくる。

ひゃっこん、
ひゃっこん、

という不気味な動きで、決して早くもないスピードなのに気付けば真後ろにつく。


なに!?

なんなん!?

なんなんよ!!


背後でひゃっこん、ひゃっこん、と揺れる影が怖ろしくて堪らず、誰か、と叫ぼうとした時。

息を飲むと同時に目が覚めた。

いつもそこで、飛び起きる。

汗びっしょりの中、今何時だろうと思い目覚まし時計に手をやる。


決まって時計は、

同じ時刻を指しているそうだ。
< 3 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop