彼の瞳に捕まりました!
「……」
高瀬が居なくなる。
今まで考えもしなかった現実を突き付けられて、声が出なくなった。
嫌だ。
嫌、嫌、嫌。
頭の中をその言葉ばかりが巡る。
「麻生さん」
「行成を説得してほしい。行成にとっても最後のチャンスだから」
説得?
わたしが、説得?
自分の気持ちをまだ伝えることも出来ない私が、高瀬を中東に行くように説得するの?
わざわざ、自分から離れて行くようにするの?
そんなの、出来ないよ。
出来ないよーーー
「どうして、私なんですか?」
感情を圧し殺し、しぼりだすように声をだした。
そんな私に大沢さんは、眉を下げる。
「私に言われなくても、わかりますよね?」
彼はそう言うと立ち上がり、
「お願いしましたよ」
と、頭を下げて店を出ていった。